日本一大しめ縄の里 飯南町

日本一大しめ縄の里 飯南町

日本一大きなしめ縄は、どこの神社のものなのか?

ある出版物よると・・・出雲大社(島根県)、宮地嶽神社(福岡県)、出雲大社常陸分院(茨城県)の三社の大しめ縄がベスト3に入るそうです。

三社とも、長さ10〜13m前後、重さ3トン〜5トンと言われており、順番をつけるのは難しいかもしれませんが、この3つの大しめ縄、実は、すべてに飯南町が関わっています。

出雲大社神楽殿の大しめ縄は、平成30年に飯南町注連縄企業組合が制作したものであることはご存知のとおりですが、実は、出雲大社常陸分院の大しめ縄も飯南町注連縄企業組合の手によって、平成24年に飯南町で作られたもの。さらに宮地嶽神社の大しめ縄が平成25年に架け替えられた際には、飯南町注連縄企業組合の棟梁が現地で「大撚りあわせ」の指導を行いました。

全国の大しめ縄に飯南町のしめ縄づくりの伝統が活かされています。まさに飯南町は「日本一大しめ縄の里」というわけです

出雲大社神楽殿大しめ縄の架け替え
長さ13.6m、重さ5.2トン
出雲大社神楽殿大しめ縄の架け替え(平成30年7月)

飯南町でしめ縄づくりが盛んなワケ

■【環境】強くしなやかな稲わらの産地

飯南町は標高500mに位置する高原地帯。おいしいお米の産地でもあります。昼夜の寒暖の差はデ ンプンの蓄積を促進し、おいしいお米が育つと言われていますが、稲のわらも同じ。昼と夜で14度以 上にもなるという飯南町の環境で、稲わらも細胞内に脂分を蓄積し、しなやかで強い稲わらとなりま す。飯南町はしめ縄づくりに適した稲わらの産地でもあるのです。   近年、飯南町では、お米を収穫しないしめ縄専用のわらの栽培に取り組んでいます。栽培を行って いるのは、丈の高い古代米の一種「赤穂もち」と昭和20年代ごろまで島根県で栽培が推奨されていた 「亀治」という在来品種。米が実る前、稲が青々とした状態のまま刈取りを行い、乾燥させ、しめ 縄づくりの材料とすることで、美しく清々しい、しめ縄を追求しています。

人の背丈ほどに育つ「赤穂もち」の青刈り
人の背丈ほどに育つ「赤穂もち」の青刈り

■【技術】長い冬に培われた技術

飯南町は中国山地の多雪地帯として知られています。雪に閉ざされる飯南町では、古くから農家の冬仕事として、わら細工が盛んに行われていました。雪靴、手つまご(手袋)、蓑、わらじ、はんぼ(わらで作られたおひつ入れ)など生活必需品の多くはわらで作られていました。こうした当時の民具は国指定民俗文化財として飯南町民俗資料館に収められ、囲炉裏端で代々受け継がれてきたわら細工の技術は、飯南町の大しめ縄づくりに活かされています。

国指定民俗文化財「雪の民具」飯南町民俗資料館所蔵
国指定民俗文化財「雪の民具」飯南町民俗資料館所蔵

■【歴史】出雲神在月はじまりの地

飯南町は、出雲大社、また同社の主祭神であるオオクニヌシ神と関わりの深い地域です。昭和30年代には出雲大社の分院がありました。また、飯南町にある琴引山はオオクニヌシの神宝である「琴」が納められている山として、今から1300年前につくられた『出雲国風土記』に記され、「出雲神在月」に全国の神々が最初に降臨する山として知られています。旧暦の10月全国の神々は出雲大社に集合されるため、この月を全国では「神無月」といい、出雲地方では「神在月」といいます。八百万の神々は出雲大社に集まる際、まず、琴引山に降臨し、この山を源流とする神戸川を伝い、日本海へ出て稲佐浜から出雲大社へ向われるといわれています。出雲地方へ全国の神々がお集まりになる特別な1ヶ月は飯南町からスタートするのです。

「神迎え神事」八百万の神々を迎える琴引山山頂を清める神事
「神迎え神事」八百万の神々を迎える琴引山山頂を清める神事

「オオクニヌシ神は、寝ているスサノオのもとから娘のスセリ姫、太刀・弓矢・琴を略奪し、スサノオの試練を克服し、地上世界の王となった」 日本最古の歴史書とされる『古事記』にはこんな神話が記されています。この物語は、オオクニヌシ神がスサノオから支配権を譲り受けたことを示し、太刀・弓矢や武力の象徴、琴は政治力の象徴であると言われていますが、 『こども出雲風土記』(川島芙美子 著) には、その後の物語が掲載されています。 「オオクニヌシは根の国から脱出した後、琴引山に妻のスセリ姫と登り、岩屋にこもって、琴を奏でながら出雲国の国づくりについて考えを巡らせました。さらに琴引山の山頂からは、遠く出雲平野を眺めこれから鎮まるべき場所を定めました。それが今の出雲大社です。」 出雲平野と日本海、弓なりの稲佐浜を見渡すことができる琴引山山頂では、夫婦となったオオクニヌシとスセリヒメの希望に満ちた旅立ちの様子を思い起こさせます。

琴引山から「国見」をするオオクニヌシとスセリヒメ
琴引山から「国見」をするオオクニヌシとスセリヒメ
 
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